タラ・ムーア著『図説クリスマス全史』(原書房)を読んだ。ローマ時代に始まり、○世紀、○世紀と時系列的にクリスマスの変遷を追う通史・・・かと思ったら、そうではなく、テーマ毎に色々な時代の色々な地域のクリスマスにまつわる文化やエピソードを紹介したものであった。
例えば、「異郷でのクリスマス」という章では故郷から離れた地でクリスマスを祝った人々がテーマになっているのだが、19世紀に植民地に入ったヨーロッパ移民たちのクリスマスから、南極で研究にいそしむ科学者たちのクリスマス、果ては国際宇宙ステーションの乗組員たちのクリスマスまでもが紹介されている。
そんな中、私が印象的だったのは‥「禁じられたクリスマス」という章に登場するピューリタンたちのクリスマスだ。英国の宗教改革で生まれた「ピューリタン」たちは、純粋な聖書信仰を追求する中で、クリスマスを禁止した。聖書にはクリスマスを祝えという記述は一切なく、カトリック的な祝日だと考えられたからだ。キリスト教徒の政権が、本章で取り上げられている共産主義政権やイスラム教国のように、クリスマスを禁止していたというのは驚きである。
更に、彼らの中から新大陸アメリカに移住した者たちがいたため、アメリカの多くの地域でもクリスマスは禁止された。現在の世界のクリスマスが、アメリカのスタイルをスタンダードとしつつある状況を思えば、意外である。
これには興味深い考察が紹介されている。「宗教学者のリー・エリック・シュミットは、この緊張感を生み出した一因はクリスマスを頭ごなしに否定してしまったことにあると主張している。・・・クリスマスの存在を無視しようとしてきた結果、アメリカでは無宗教のクリスマスが世俗社会で発展していった。(272頁)」アメリカでは宗教行事としてのクリスマスを否定しようとした結果、今日世界に広まっているような世俗的なクリスマスが発展したというのだ。もしそうだとしたら、何とも皮肉な話である。
尚、私はクリスマスの起源について悩んでいた時(「クリスマスと私」http://cavazion.seesaa.net/article/496115827.html 参照)、多くのカトリック的な風習が廃止された宗教改革に於いて、どうしてクリスマスだけは手付かずのまま残されたのか疑問に思っていた。同じ宗教改革者でもルターなどは積極的にクリスマスを祝っていたからだ。ところが実際は、ピューリタンたちのような事例が、やはりあった。その事実については今回初めて知ったわけではないが、私の着眼点もあながち突拍子もないものではなかったと思う次第である。
また、「クリスマスの世界戦略」という章では、日本のクリスマスについても述べられている。欧米では家族中心に祝われるクリスマスが、日本では恋愛要素が加えられ、恋人たちがホテルに泊まる日になっていることを、かなり赤裸々に解説している。一方この日にはケンタッキーフライドチキンがよく売れることまで書いてある。
そして、日本のクリスマスを象徴するものとして挙げられているのがクリスマスケーキだ。元々は欧米の豊かさの象徴であったケーキが、日本で独自の進化を遂げたとしている。イチゴの赤とクリームの白という配色は、昔から結婚式などの祝いの席で用いられるという指摘は、日本人自身気づいていないことでなるほどと思うが、その丸みを帯びた形状は祝日の餅に似ているというのは、さすがにこじつけの気がする。外国人が日本をどのような目で見ているのかがわかっておもしろかった。

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