12月25日(クリスマス)は、実際のイエスの誕生日ではない。この日は本来、ローマ帝国で流行した宗教「ミトラ教」の太陽神の誕生日であった、と言われている。子どもの頃から「クリスマスはイエスさまの誕生日」と信じてきた私にとって、それはかなりショッキングな情報であった。
そんなわけで、ミトラ教に多少の関心を持っていたところ、今回、井上文則著『異教のローマ ミトラス教とその時代』(講談社)という本を見つけたので、読んでみた。ローマ帝国におけるミトラス教(以下、本書に合わせてこう表記する)のあらましを述べた本である。途中、中断して高原剛一郎さんの『世界は聖書でできている』や先日紹介した『シーア派』(「イスラム教を鑑にヤハウェの愛を知る」http://cavazion.seesaa.net/article/517794090.html 参照)を先に読んだため間が空いてしまい、全体を十分消化できなかったのが残念であった。しかし、本書には、私にとって「ショッキング」を上書きするような情報が述べられていたのである。
本書によれば、ローマに太陽神信仰を持ち込んだのはアウレリアヌス帝であった。この「不敗の(太陽)神の誕生日」とされたのが、冬至に当たる12月25日だったのである。著者は、この日を制定したのもアウレリアヌス帝であったと推測している。そしてこの日が、後にイエスの誕生日として祝われるようになったのだ。しかし、「巷間では、イエスの誕生日は、もともとミトラス神の誕生日であったとされているが、正確には、その日は、アウレリアヌス帝の不敗の太陽神の誕生日だったのであり、ミトラス神の誕生日だったのではない。」(108〜109頁)というわけで、12月25日は、イエスの誕生日でなかったばかりか、(同じ太陽神として親和性はあったと考えられるものの)ミトラス神の誕生日ですらなかったのである。
もっともWikipediaなどでは「不敗の太陽神」がミトラス神と同一視されていたとの説明がなされている。一方、本書は今年出版されたばかりであり、最新の研究成果だろう。また、ミトラス教は「密儀宗教」でありその教義が外部に知らされておらず、史料があまり残っていないため未だ謎が多い。クリスマスの謎も、まだまだ上書きされていくのかも知れない。

この記事へのコメント